円形脱毛症のための薬が新しく承認されました
円形脱毛症の重症患者向けの薬が発表されましたのでお知らせ致します。
新しい治療薬の名前は「バリシチニブ」(商品名・オルミエント)と言い、昨年6月から保険が利くようになりました。
私たち理容師が使用したり販売することはできませんが、知識をお客様に提供して新たな治療の選択肢として主治医と相談することをお勧めします。
円形脱毛症はリンパ球が毛根を誤って攻撃して毛が抜ける自己免疫疾患のひとつとされ、こうした自己免疫疾患は攻撃を受けた臓器により、甲状腺ならバセドー病、大腸なら潰瘍性大腸炎、関節ではリウマチを発症します。
円形脱毛症を発症した人の中には、他の自己免疫疾患との合併でアトピー性皮膚炎や、メラニンを作り出すチロシナーゼ酵素の働きが免疫細胞に阻害され、攻撃を受けた部位の皮膚の色素が抜ける尋常性白斑が起こったり、潰瘍性大腸炎をともなうことがあります。
円形脱毛症の場合は8〜9割は40歳代までに発症し、私のサロンでの相談は幼稚園から小学生が多くなっています。(昨日相談にみえた22歳の女性は、幼稚園の時に全頭脱毛症になり、そのときは自然回復したのに今回は襟足や前髪の抜け毛が止まらない―――>抜け毛と言うよりも円形脱毛症特有の断毛がほとんどでした。アトピーも併発していました。)
症状の重さにより、単発型、多発型、蛇行型、全頭型、汎発型などがあり、先の治療ガイドラインでは炎症を抑えるステロイドの注射や塗り薬、冷却療法、SADBEやDCPCを塗布して人工的にかぶれを起こして発毛を促したり、PUVA療法(薬剤のソラレンと長波長の紫外線を併用する光線療法)
などが行われていますが、ガイドラインでも重症患者への決め手となるA群に相当する治療法はありません。
重症化した患部ではリンパ球を活性化させるサイトカイン(炎症の重要な調節因子で細胞から分泌される低分子のたんぱく質の総称)が過剰につくられます。毛包の細胞の中のたんぱく質であるヤヌスキナーゼ(略称JAK)を中継してリンパ球にさらなる攻撃信号が伝わり、リンパ球内のJAKはそのリンパ球の活性化を促し毛根攻撃が激しくなります。
この攻撃信号を遮断しリンパ球の活性化を抑える薬(JAK阻害薬)が第3のコロナ治療薬(酸素吸入、ECMOを要する肺炎の治療薬、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎などを適応症として2021年4月23日に承認)として承認された「バリシチニブ」です。
円形脱毛症に対しては、@脱毛範囲が頭部の50%以上で、A既存のB群、C群の治療を6ヶ月ほど行っても効果がみられない、B事前の血液検査などで服用できることが確認されたなどの条件を満たす患者に限られていること
で、すべての重症患者に効くわけではないことと、免疫力が下がるため感染症のリスクが若干あがる可能性があります。(2014年に、JAK阻害剤を経口投与すると一部の被験者の発毛を回復させることができ、皮膚に塗布すると発毛が効果的に促進されることが発見されています。)
30日分の薬代が3割負担で約47000円かかること。飲み始めると長期間続けなければならない可能性があること。今後の有効性や有害事象などの知見の集積により投与に伴う副作用などが起こることも懸念されるので主治医とよく相談することが必要です。
私たちが行う相談やトリートメントでは、細菌、ウイルス感染、過労、肩こり、などがきっかけで発症することが多く、ストレスは直接の原因ではないことを説明し、まずは医師の診断・治療を受けることをお勧めし、薬剤を使用することができませんので血行を良くするマッサージやツボ刺激を行います。