第19回 白髪で悩んでいます。白髪は抜くと増えますか?

質問
 私はまだ若いのに、最近白髪が目だつようになってきました。どうして白髪になるのでしょうか?また、白髪は抜くと増えるとか、恐怖で一夜にして白髪になるなどと言われますが本当でしょうか?白髪に関する新しい情報などがあれば、教えて下さい。
(岩手県 W・H男)

回答
白髪は加齢にともなって増加していきますが、最近は若い人にも多くなってきています。
 白髪の発生原因もかなり研究されてきましたが、まだ謎の部分が多く
@毛乳頭の先端にあるメラノサイト(色素細胞)は髪が生え変わる時に大部分が失われ、毛根周辺にあるメラノサイトが毛乳頭に移動することによって黒髪が再生していたが、この移動のサイクルが崩れ、メラノサイトの働きが低下したことによるとする説。
Aメラノサイトの数がしだいに減少するという説。
Bメラノサイトの数は変わらず、メラニン形成酵素が減少するという説。
Cメラノサイトから角化細胞へのメラニン色素顆粒移動障害によるという説。
 などの いろいろな説があります。
 メラノサイトから放出されたメラニン色素は、角化する前に皮質細胞に多く取り入れられて成長し、これが毛髪の色を構成しています。
 白髪は一般的には老化による年齢的なもので、メラニンをつくる能力が次第に衰えて色素が消失したものですが、だからと言って身体の機能までが老化しているということではなく、若い人にも発生することがあります。 日本人の白髪の発生年齢は、人にもよりますが平均35歳前後で、白髪が頭髪全体の50%になるのは、55歳前後であると言われています。
 メラニン色素は、毛髪をはじめ皮膚や内臓器官まで身体の至るところにありますが、毛髪、皮膚、瞳孔など皮膚表面に含まれるメラニン色素は、有害な紫外線の害から身体を護るためにつくられています。そのため赤道直下に住む人種は紫外線の害も強いため、髪は縮れ、黒色で、北欧などの太陽光線の弱い所に住む人種は直毛でメラニン色素が少なく、明るい金髪になっています。
毛髪がヘアサイクルにともなって
抜けて生え替わるとき、抜ける毛の毛根部は萎縮して上方へ移行していきますが、毛乳頭の一部も一緒に引き上げられていきます。ここに新しい毛髪を誘導するなんらかの成分があり、さらに毛包の皮脂腺の出口より下のバルジ領域にある幹細胞が、残っている毛乳頭の成分のある方へ誘導されて、新しい毛根を作ることが分かってきましたが、その時に、毛髪の色を作るメラノサイトも分裂して増えていくようです。
「白髪を抜いたら増える」と感じるのは、一つの毛穴からは数本の毛髪が生えていますが、一本が白髪になったとすると、その白髪を抜いたときに毛孔の組織が少し破壊され、白髪の要因が隣の毛根にも影響したり、無理に抜いた白髪が再生してくるまで、平均129日かかりますので、その4カ月の間にさらに老化が進み、新しく再生してきた毛の隣の毛もメラニン色素をつくらなくなってしまったような場合に起こることが考えられます。また、ショックや恐怖で一夜にして白髪になると昔から言われていますが、毛髪が全部白髪になるには、どんな状況であろうと数ヶ月という期間が必要で、短時間で生えている部分のメラニン色素が無くなり黒髪が白髪化するというようなことは理論的には考えられません。
(全理連中央講師 板羽忠徳)

参考資料
最近発表された白髪に関する新聞の要約情報です。
● 色素幹細胞の存在が確認された

 生物の体毛などの色を発色させる色素幹細胞が、毛根部の「バルジ」と呼ばれる場所に存在することを、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の西川伸一グループ長(京都大医学部教授・分子遺伝学)らがマウスの実験で突き止め、25日発行の英科学誌ネイチャーに掲載された。
 グループは黒いマウスに細胞増殖因子の機能を抑制する抗体を注射し、人為的に体毛を白くしても再び黒くなることに着目。幹細胞が色素細胞に成長するためだと考え、調べたところ毛根部の皮下500ミクロンの立毛筋があるバルジ部分で色素幹細胞を発見した。
 色素を失っても色素幹細胞は不活性化しているだけで、無くなっていないことが分かった。この部分に生きた色素細胞は無いが、白いマウスに黒いマウスの色素幹細胞の切片を移植したら黒い毛が生え始め、色素細胞が新生したことが確認された。西川教授は「白髪の場合は毛根があるので、さらにバルジ部分の機能を解明すれば、黒髪に戻したり、白髪を予防することができるかもしれない」と話している。
(毎日、神戸新聞、他 2002-04-25)

●遺伝子レベルで白髪発生原因解明
 花王は白髪の発生に、特定遺伝子の量が関係することを突き止めた。毛髪の根元の「毛球部」のタンパク質FGF(繊維芽細胞増殖因子)を作る遺伝子の量が減り働きが低下。メラノサイトの増殖力や毛髪細胞のアポトーシスを回避する能力が下がるためという。
花王は早ければ5年後にも、白髪予防剤や白髪改善剤の開発を目指す。 人間の老人性白髪の大部分は毛球部のメラノサイトが減少したり、消滅するのが原因と考えられている。 花王の研究グループは黒髪の人と白髪の人の毛髪から、それぞれ毛球部を含む根元部分を取り出し、遺伝子を解析した。FGFを作る遺伝子の量が黒髪の方が約2.5倍高かった。メラノサイトを培養してFGFの作用を調べたところ、メラノサイトを増やすだけでなくアポトーシスを強く抑制していることも分かった。メラノサイトにFGFを添加するとアポトーシス抑制遺伝子として知られるbc1−2の量が、約6倍に上昇していた。このため白髪で毛球部のメラノサイトが消滅するのは、毛球部でFGFの量が減り、増殖力とアポトーシス回避能力が弱まるためと分析。今後はFGFやbc1−2の働きを高める物質を探し出し、白髪予防・改善剤の開発につなげる。FGFの仲間は体内に広く存在し、血管や筋肉など様々な細胞を増殖させるタンパク質として知られる。
(日経産業新聞 2002-3-7 )

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