第21回 異常に抜け毛が増えて悩んでいます。復活の余地は?
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質問 仕事上帽子を常にかぶっています。疲れている日は汗をたくさんかいてベタついているにもかかわらず、そのまま洗髪せず寝てしまう事がよくあります。全体にボリュームがなく、特に分け目がかなり薄くなってる気がします。どのように対処すればよいでしょうか? (東京都 N.M人 二六歳)
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回答 本来は頭皮の状態や抜け毛の状態などを検査してみなければならないのですが、「汗」を気にしての質問のようですので、汗を中心にアドバイスしておきます。 頭部の汗は小汗腺から分泌され、水が99%占めています。他に塩素、ナトリウム、カリウムなどや、尿酸、尿素、アンモニア、乳酸などが含まれており、普通はpHは4.5〜5.5位の弱酸性になっています。 たくさん汗かくとpHはしだいに7に近くなってアルカリ性側に傾くようになってきます。この段階でシャンプーをして洗い流しておけば脱毛に発展することはあまりありませんが、
アルカリ性側に傾いてきたのをそのままにしておくと、皮膚の表面に常在する細菌類の発育や増殖をおさえている皮脂膜(脂肪膜)の働きが弱まり、表皮ブドウ球菌、ニキビ桿菌などが繁殖
し、特に頭や顔のように皮脂腺の多い部分では、好脂質性のイースト菌の一種のピチロスポルム・オバーレやピチロスポルム・オルビクラーレなどが繁殖しやすくなったり、通過菌の黄色ブドウ球菌や連鎖状球菌、緑膿菌、大腸菌、白癬菌などのカビ類などにより感染を起こしたり、頭皮の新陳代謝を乱したり、皮脂や汗を分解して臭気を発したり、分解生産物によって刺激を与え、フケやカユミを発生させるようになってきます。 この段階ではZ・pt(ジンクピリチオン)やオクトピロックス、硝酸ミコナゾール(ミコナゾール・ナイトレート)、ティ・トリーなどが配合されたシャンプーを使用してシャンプーすれば繁殖を抑え、フケも少なくすることができたのですが、フケが病的に多く発生するようになると、乾性のフケは粃糠性脱毛症、脂性のフケは脂漏性脱毛症へと発展するようになってきます。 「特に分け目がかなり薄くなってる気がする」ということですので、やはり男性型脱毛症の症状が始まっているものと思います。 男性ホルモンが毛乳頭の標的細胞で作用を発揮するするためには、テストステロンが標的細胞内に入った後、5α・リダクターゼにより活性が高い5α・DHT(5α・デヒドロテストステロン)に変換され、レセプター(受容体)と結合し、この複合物がDNAに作用して各種蛋白の合成や中止を介して強力な男性ホルモン作用を起こすようになり、脱毛が起こってきます。 5α・リダクターゼには若ハゲを起こす前頭部や頭頂部や口ひげ、顎ひげの毛乳頭細胞にはT型とU型、後頭部の毛乳頭細胞にはT型だけが発現されているとされていましたが、最近の研究により、皮脂腺周辺、内部には主にT型の5α・リダクターゼが存在し、毛乳頭細胞、毛包内部、深部や前立腺には主にU型の5α・リダクターゼが存在していることがわかってきました。
ベタつくということは皮脂が多いということですので、T型酵素がDHTに変換し、男性型脱毛症が引き起こされる状況になっている状態です
ので、対策として、亜鉛、ソーパルメットなどは5α・リダクターゼをブロックしてくれますし、ホップ、セージ、タイム、ローズマリーなどもブロックしてくれます。ビタミンB6も皮脂の分泌を調整してくれますので、汗をかいたらこまめにシャンプーすることと、これらを試してみるのも良いと思います。 (全理連中央講師 板羽忠徳)
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参考資料 ●
DHTからアポトーシス、脱毛まで
資生堂と国立精神神経研究所は共同で、男性型脱毛の進行にたんぱく質の「TGFベータ2」が関与していることを突き止めた。毛根が萎縮する退行期への移行を促すもので、活性型男性ホルモン「DHT」により増加し、アポトーシス(細胞の自殺)を引き起こす酵素の「カスパーゼ」を活性化、毛髪を生み出す毛乳頭細胞を死に導き脱毛を起こすという。この物質の働きを抑えられれば、毛が太く育ち、薄毛になるのを防ぐ可能性があるという。 一方、TGFベータ2の働きを抑制し、毛髪の成長期を延ばす有効成分をそれぞれ植物のアマチャとソフォラから特定することにも成功した。 同社では男性ホルモンにより毛が十分に成長する前に退行期が始まり、産毛化することが男性型脱毛の原因であることを見いだした。 ………とあり、これによりTGFベータ2が退行期開始の原因物質であると判断、同物質の働きを阻害するため、植物エキス400種類の中からユキノシタ科の「アマチャ」が持つ有効成分「AMA1」を発見した。 また血行を促進し、毛幹伸長に効果がある成分をマメ科の「ソフォラ」から見いだすことにも成功した。 実際にソフォラ抽出エキスを半年間にわたり44歳の男性に塗布したところ、0.06mm以上の太さの毛髪が16%から36%に増加した一方、 0.04mm以下の太さの毛髪は40%から34%に減少した。 (日本経済新聞、日刊工業新聞など)
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