第29回 頭皮の突っ張りや色はなぜ変化する?

質問
 側頭部の頭皮は青っぽくて弾力があり、髪もツヤツヤしていて元気なのですが、頭頂部は突っ張っていて、茶色っぽく、髪も水分がなくパサパサで伸びるのも遅いような気がします。頭皮の突っ張りや色はなぜ変化するのでしょうか、また回復は可能でしょうか?
(神奈川県 T.T郎 32歳)

回答
  頭皮の突っ張りは、小さく摘んでみて頭皮が動いて寄せられる位が普通 なのですが、頭皮そのものが硬くなっている場合と、ピンと張っていて突っ張っている場合があります。
 硬い場合は血行不良などにより老化が促進されていたり、紫外線などの影響でコラーゲン(膠原線維)やエラスチン(弾性線維)に変化が起こったり、乾燥が起こっていたり、乳酸などの老廃物がたまっていることが考えられます。
 ピンと張っている場合は頭蓋骨が発達している割に頭皮の成長が悪かったような場合に起こります。また、頭皮の厚みが薄いため摘めないような場合もあります。逆に緩すぎたり、ブヨブヨ動いたり、押すと凹むような「むくみ」の場合もあり、緩いからとか動くからといって必ずしも良いというものでもありません。
 これらは遺伝的要素や骨格の影響、体質などもあり、たまに行うトリートメント程度では持続する緩みが起こったり、普通の軟らかな頭皮になるというものではありません。肩コリなどで筋肉や筋が硬くコッているような場合は、筋弛緩剤などで軟らかになりますが、 頭頂部には筋肉が無いため定期的に皮膚を動かしたり、保湿したり、血流を良くすることで軟らかくします。
 水分保持のためには昔はグリセリン、最近はNMF(天然保湿因子)、ヒアルロン酸、コラーゲンなどを供給したり、保湿作用をたかめるために細胞間脂質を補うなどしますが、これらが配合されたトリートメント剤の使用直後は保湿などが十分されているため、硬度計で測定してみると軟らかくなっていることが分かります。
 茶色の頭皮は紫外線(老化促進因子として働きます)によるメラニンのせいで、つくられたメラニンはただちにケラチノサイト(角質層を作り出している細胞)に受け渡され、皮膚を護ろうとします。若くて健康な皮膚の場合はケラチノサイトの代謝も活発で、メラニンの分解速度が早いため元の白さに戻りますが、皮膚の老化により分解の速度が衰えてくると褐色になったままになります。逆に言えば もともと白かった人が褐色になっていることは老化している とも言えます。
 オゾンマッサージャーなどで酸素の供給や血行を良くすることにより変化は起こってきます。
 なお、頭皮を動かすマッサージは、高血圧、貧血、体調不良、皮膚が弱くできもの等のある時は控えなければなりません。
(全理連中央講師 板羽忠徳)

参考資料
●頭皮(SCALP)の構造と血流 
 皮膚は表皮、真皮、皮下組織が重なってできていますが、頭皮は頭蓋骨につく関係で、表面側からSkin (皮膚)、Connective tissue (結合組織)、Aponeurososis (帽状腱膜)、Loose connective tissue (ゆるい結合組織)、Pericranium (頭蓋骨膜) の順になり、これらの層の頭文字をとったスカルプ(SCALP)と呼ばれる独特な構造をしています。
 ゆるい結合組織で頭蓋骨の上に貼り付いている帽状腱膜という丈夫でピンと張ったスジ状の膜に皮膚がのっています。この帽状腱膜は額の前頭筋と後頭部の後頭筋、両側頭部の側頭筋により頭蓋骨についています。皮下組織は脂肪の集まりで柔らかいのですが、丈夫な真皮と帽状腱膜をつないでいる皮膚支帯で結ばれて固定され、帽状腱膜はほとんど動かないのに対しその上の皮膚は前後左右に動くことができるようになっています。
 皮下組織の網状の血管から毛包や毛乳頭、表皮乳頭層へ血液中に含まれる栄養や酸素を運んでいますが、頭皮の硬さと血流に関しては、元久留米大学医学部の布施四郎教授の皮膚硬度計の測定によると、「個人差はあるものの、男女とも20歳頃が最も軟らかみがある。 20歳以降は女子には変化は少ないが男子では著しく硬度が増し、ことに禿髪部では顕著である 」と発表し、血流に関しては、「 薄毛の人では正常の人の2.6倍低かった 」とコペンハーゲンのゲントフテ病院のDrクレンプ・ピーターズにより発表されています。
 人体で最も細胞分裂が活発なのが毛母細胞と生殖器、腸の絨毛細胞で、髪の維持には豊富な血流が必要なことがうかがえます。

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