第50回 めまいや動悸、ほてり、脱毛と神経の関係は?
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質問 このところ体調が不安定で、生理不順が続いたり円形のような脱毛が起こってきました。友達に自律神経がおかしくなったのではと言われました。自律神経と脱毛の関係って……? (山梨県 M.Y子 24歳)
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回答 自律神経は私たちの意思に関係なく働いている神経で、その中枢はホルモンの場合と同じく間脳の視床下部というところにあり、ここから出た神経細胞は交感神経と副交感神経となって内臓の諸器官や分泌線などに分布し、皮膚では交感神経が刺激されるとエネルギーを発散するように体の活動を活発にし、発汗の促進、立毛筋の収縮、血管の収縮などが起こり、副交換神経が刺激されるとこの反対の症状になりエネルギーを蓄積するように休息と疲労の回復をもたらします。 他にも生体にとって最も基本的な循環、呼吸、消化、代謝、体温維持、分泌、排泄、生殖などさまざまな器官を自律的に調節してホメオスターシス(恒常性)の維持を行っています。 交感神経と副交感神経は全く逆の作用を持っていて、これらの神経系がその時々に応じて車のアクセルとブレーキの役をして、順調な生命活動をもたらしているのですが、
緊張状態やストレス状態が過度に長く続くと、交感神経のみが働いたり、バランスが崩れて両方が働いたり、あるいは働かなくなったりすると、先にあげた自律機能の失調が起こるようになってきます。
こうなると高血圧、めまい、どうき、息切れ、呼吸困難や胸の圧迫感、肩こりなどの循環器症状や、更年期症状、生理不順、生理痛、のぼせ感などの婦人科症状や、胃痛、便秘、下痢、膨満感などの消化器症状、膀胱炎、頻尿、残尿感などの泌尿器症状、喉の異常、耳鳴りなどの耳鼻咽喉科症状、目の充血、眼精疲労などの眼科症状などとともに、皮膚科の症状として脱毛、神経性蕁麻疹、皮膚掻痒症などの様々な体の不調を訴えるようになってきます。 このような自律神経のアンバランスが引き金となって起こった症状を「自律神経失調症」と呼んでいますが、特に円形脱毛症などは、病因としては自己免疫説が有力ですが、精神的因子の関与による自律神経機能の異常も発症の一因と考えられていますので、皮膚科だけでなく神経科や心療内科などを受診することをお勧めします。 生理不順に関しては、婦人科を受診し甲状腺機能障害、副腎機能障害、卵巣嚢腫、多嚢胞性卵巣、糖尿病、膠原病などの病気や、ホルモン値に異常がないかどうかを調べてもらう必要があります。 歯の噛み合わせの異常によって、自律神経失調による脱毛が起こることが動物実験から報告されていますので、歯科で噛み合わせをチェックしてもらうことも必要かも知れません。 (全理連名誉講師 板羽忠徳)
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参考資料 自分でできる自律訓練法
ドイツの医学者シュルツが開発した「自律訓練法」を紹介します。 意識的に副交感神経の働きを高め、自律神経のリズムを整える効果があります。衣服をゆるめリラックスした状態で行います。 ●基本姿勢 椅子に深く腰掛けて背骨は自然に曲げ、ひざは少し離して座り、両手首は自然に垂らして体の力を抜いて頭はやや前に傾けます。 ●背景公式(安静暗示) 「自分の気持ちは落ち着いている」と心の中で念じ、リラックスを暗示します。 ●第一公式(重感暗示) 「手足が重い、とても重い」と心の中で念じ、筋肉の弛緩を促します。 ●第二公式(温感暗示) 「手足が温かい、温かい」と言う暗示を自分に言い聞かせます。 ●第三公式(重感暗示) 「心臓が静かに規則正しく力強く打っている」と念じ続けます。 ●第四公式(呼吸調整) 「呼吸が楽だ」と暗示します。 ●第五公式(腹部温感暗示) 「胃のあたりが温かい」と想像しながら暗示します。 ●第六公式(額涼感暗示) 「額がここちよく、冷たい」と木陰のそよ風を想像して暗示します。 ●解除の仕方(覚醒のための動作) 両手を3〜4回、ゆっくり握って開いてから、腕を曲げながら力を入れ深く握りしめ、今度は力を抜きながら、両腕をゆっくり前に伸ばして思いっきり伸びをします。
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