第51回 何故かムラに染まったり、脱色するのですが?
|
質問 カラーリングやブリーチを行うとなかなか均一に染まったり、脱色できません。染まりやすい部位と染まりにくい部位があるのは何故でしょうか?その原因および理由を知りたいです。 (石川県 M.K子 理容師)
|
回答 化学反応の強さは時間と温度と濃度(量)が関係しますが、染毛(カラーリング)や脱色(ブリーチ)の場合もこれらの関係とさらに毛髪の性質の違いが影響して変化します。 同じ濃度のブリーチ剤でモデルウイッグの髪をブリーチした場合、頭皮の温度差や毛質差はほとんどありませんので、最初に塗布した部位や、大量に塗布した部位が早くブリーチされて髪が明るくなっていきますが、実際の人間の頭の場合は頭皮の部位による温度差や髪の性質や損傷の程度などの違いによって変化します。 後頭部は頭皮の温度が低いために染まりにくいから先に塗布することが必要と説明されますが、実際に頭皮温度を測定してみますと、逆に後頭部の方が高く、頭頂部の方は血行が悪いため低くなっています。この部分については頭皮温より毛の太さやメラニン色素の強さの違いと、塗布した時の頭皮側の熱のこもり方などが影響しています。 温度の影響は、低い環境よりも高い環境の方が早くブリーチされやすくなりますし、毛先側より頭皮側の温度の方が体温の影響を受けることから、毛束(ストランド)の根元側が早くブリーチされます。また、毛先が損傷しているとその部分も早くブリーチされてしまいます。 毛髪の性質では、毛髪の太さや強さ、損傷の程度、メラニン色素の強さなどにより変化します。 日本人の場合太さは、0.06~0.09mmですが、髪が薄くなりやすい部位の前頭部、特に両隅部の部分と頭頂部が細くなってくると、メラニンも次第に弱くなり、髪の色も他の部位に比較すると明るくなり、早くブリーチされるようになります。 損傷についてはパーマや縮毛矯正などを受けると化学的損傷が起こり、ブラッシングなどによりキューティクルが損傷を受けると、浸透が容易になるためブリーチされやすくなってしまいます。 また、温度差についてですが、染毛剤やブリーチ剤を頭毛に塗布して薬剤によって頭全体をカバーしたような状態や、キャップをかぶせたような場合、頭皮付近の空気は温まると上昇することから頭頂部周辺に熱がこもることにより温度が上がり、ブリーチされやすくなることもあります。 以上のことから
頭頂部、両隅部がブリーチされやすい部位
ということになり、実際にブリーチやカラーリングを行う場合は
薬剤の量を少なく塗布したり、時間差を利用して染まりにくい部位を先に、染まりやすい部位は後から塗布するなどの工夫が必要
になります。 (全理連名誉講師 板羽忠徳)
|
参考資料 メラニン色素について メラニン色素には「ユーメラニン」と「フェオメラニン」の2種類があります。 メラニンが作られる際に、ドーパキノーンが直接酸化されるとEumelanin(ユウメラニン=Sメラニン=真メラニン)と呼ばれる黒褐色〜黒色のメラニンが生成され、一方ドーパキノーンが酸化される際に、アミノ酸の一種であるシスティンが取り込まれると黄色〜赤褐色のPhaeomelanin(フェオメラニン=Bメラニン=亜メラニン)と呼ばれるメラニンが生産されます。 ユウメラニンは鉄を多く含み化学作用に対し抵抗性のある強いメラニンで、主に頭頂部、後頭部、襟部に多く含まれています。 フエオメラニンは逆に弱いメラニンで、主に側頭部や前頭部に含まれています。 人種によって毛髪の色調が異なるのは、このユウメラニンとフェオメラニンの混合比や、メラニンの量の違いによるためであり、またそれは遺伝によるもので、日本人の場合はユウメラニンが多く、フェオメラニンは少ないと報告され、金髪はほとんどフェオメラニンしか含まれていません。
染まりにくい部位 後頭部のように染まりにくい部位は、頭毛の太さ、メラニンの強さなどによります。もみあげ部と前額髪際中央部は塗布量が少なくなりやすく、作用不足が起きやすいこと、また後頭部も含めて髪が短い場合は乾燥しやすく作用不足が起こりやすいことなども原因します。このため、塗布したらコットンやパーマのペーパーでカバーしておくことをお勧めします。
|
[ご注意]
このWEBサイト上の文書、写真などの著作権はMINATO3710に帰属します。これらの著作物の全部または一部を「MINATO3710」の了解を得ずに複製、放送、有線送信、WEBサイト、講習などに使用することは著作権法で禁じられています。また肖像権などの侵害にもなりますのでご注意下さい。なお、板羽忠徳による著作物も同様です。